学術雑誌に掲載された論文は、投稿規定や著作権規程に基づき、著作権の一部が、発行元である学協会などに譲渡されていることがあります。また、著作権が著者に残る場合も、論文の再利用について条件が課されている場合があります。
そのため、雑誌に掲載された論文を機関リポジトリや著者個人のWebページなど、他の場所で公開する際には、著者だけで判断せず、学協会の方針を確認する必要があります。
しかし、個別の論文ごとに学協会に確認するのは、著者・機関・学協会のいずれにとっても大きな負担となります。そこで近年では、学協会が論文の公開に関する基本的な方針(e.g. 著作権ポリシー、オープンアクセスポリシー)を策定し、それに基づいて論文の公開可否を判断するようになってきました。
SCPJ(学協会著作権ポリシーデータベース)は、こうした学協会のポリシーを収集・整理し、誰もが簡単に確認できるようにしたデータベースです。
このデータベースを活用することで、研究者や図書館員は、論文の公開可否や条件を迅速かつ正確に把握でき、学術情報の適正な公開と円滑な流通を支援します。
著者最終稿(AM)と出版社版(VoR)
学協会が雑誌以外の場所で公開を認めているものは、多くの場合著者最終稿(Author Manuscript, AM)といわれるものです。これは一般的には、「雑誌に掲載される直前の、著者の手元にある最終の版」と解されています。さらにその他にも、「査読後(ポストプリント)のもののみ」、「査読前(プレプリント)のもののみ」といった制限がある場合もあり、それぞれポリシーが異なります。
オープンアクセス誌に掲載されたものを除くと出版社版(Version of Record, VoR)の公開が認められることは少ないですが、学協会によっては、再利用可能なライセンス(CCライセンス等)を付与して、出版社版をそのまま他の場所で公開することを認めている場合もあります。
SCPJでは、プレプリント、著者最終版、出版社版、それぞれの掲載可否を確認できるようにしています。
学術論文のバージョン
下記の図は投稿から出版までのモデルと「プレプリント」、「著者最終稿」、「出版社版」の定義を示しています。
参考
- 尾城孝一. (2021). 学術の記録をめぐる動向~ Version of Record から Record of Versions へ~. 薬学図書館, 66(3), 103-108. https://doi.org/10.11291/jpla.66.3_103
- "Version control, corrections, and retractions" | Crossref